二日目は、12時に末吉君がロビーに来て、彼の仕事場のスタジオのまかない飯を食べに行こうということになった。中国の家庭料理を味わえるチャンスだ。スタジオに着くと既に10人近くのスタッフが食事を始めていた。奥ではおばちゃんがせっせと何かを作っている。自分で茶碗やお皿を軽くすすぎ(洗ってある物でも皆必ずこれをやる)、御飯をよそい、何か豚の皮の脂っこい炒め物とやはり炒めた野菜をおかずに一口食べてみる。「うおー!美味しい。」隣では末吉君が「これは御飯が進むおかずですよー。」とワシワシ食べている。実は次の日もこのまかない飯が忘れられず、昼食はここに来てしまった。その日は焼麺だったが、とてもダイナミックな作り方で、具を炒めたフライパンにその3倍くらいの高さの大量の麺を入れ、側にあった金手洗(確か昨日は洗い物にも使っていたはず)を上に被せてしばらく蒸す。その麺を何とかかき混ぜ出来上がり。果たしてそれで美味しいのかなと思ったが、紅生姜の味にも似た漬物とも良く合いおかわりまでしてしまった。もしこれが日本の中華屋さんで出されたら大絶賛だろう(作るとこさえ見せなければね)。
午後は、Daisukeと上田君と3人で天安門と故宮の見物に出かけた。中国語のガイドブックを手にタクシーに乗り、人に道を聞きながら辿り着いた天安門広場は、やはり中国大陸を感じさせる広さがあった。ここであの痛ましい天安門事件が起きたなんて信じられないくらいののどかさ、多分地方からやって来たと思われるカメラを手にした沢山の人々、その間を長髪の謎の日本人がデジカメ片手に写真を撮りまくる姿は異様だったに違いない。天安門をくぐると幾重にも連なる宮殿があった。ラストエンペラーで有名になったあの大和殿の前に立ち、一段と高い所に置かれたあの椅子を目にすると、あの下にはまだあのコオロギがいるのではなんて考えてしまう。建物も石畳もとにかく何もかも、けた違いのスケールだった。
その後、軽く買い物をして、僕はホテルで昼寝、Daisukeたちはタクシーに乗ってデパートに行こうとしたが、言葉の問題もあり目的地には辿り着けず、結局はグルグル回って帰って来たらしい。コミュニケイションが本当に難しいんだよね。
夜は、辛さで有名な四川料理を食べに行くことに。入り口で予約をし、しばらくスイカの種を炒ったものを食べながら待たされる事30分、順番が来た。2階に上がると、どのテーブルにも真っ赤な唐辛子の山がある。あれには一瞬たじろいだ。末吉君が流暢な中国語で次々とオーダーしてくれる。僕はビールを頼むのがやっとだ。そして最初に出されたのが先程見た大きな唐辛子の山だった。その中に1cm位の小さな鶏肉が骨付きで入っている。僕らは箸を使いその中からお肉を探し出して食べるのだ。これが見た目通り辛いんだけど美味い!最後の方になってくると、余りの唐辛子の量なので宝捜しでもしている気分になり、それがまた楽しい。すっかり病み付きになってしまった。その他の料理(麻婆豆腐や魚の唐辛子とラー油煮とか)も物凄く辛いがとても美味しかった。
再び満足しきった僕らは約束のライブ・バーへ向かおうとした。その時、昨日ジャムった香港のミュージシャン達から電話がかかってきて今作曲者の会合の場でセッション大会をやっているので是非こっちへ来てくれと言う。頼まれれば行かねばなるまいと急遽そちらへ行くことに。そこは会場もステージも広く、取材陣も大勢いてTVまで入っている感じだった。あれは香港かどっかで放映されるのだろうか?それともやはり海賊版として出回るのだろうか?とか考えながら、ここでも弾きまくった。そこで出会った殆どの香港のミュージシャン達も皆82、3年のBOWのLIVEを観に行ったと言ってくれ、とてもにこやかに応対してくれた。ここでも中国人のギタリスト・プロデューサーらとブルースを中心にプレイ、Little Wingでは後半に、とても綺麗な声の中国人の女性シンガーが上がって来てスキャットで歌い始めた。最後は僕のギターと掛合いをしたりして盛り上がり、これも大喝采を浴びた。そんなことをしているうちに12時を過ぎてしまい、今度は約束のジャンジャンから「まだ来ないのか?」と催促の電話。僕らと香港、中国のミュージシャン達、それに初日も顔を見せてくれた外務省北京大使館のMさん(フュージョン好きの49歳のベーシスト。仕事後、大使館からスーツ姿のままベースを持って駆けつけてくれた)は、車を走らせること20分、その日オープンしたばかりの店に辿り着いた。平日だし、もう夜も遅いのに、お客さん達は大勢待っていてくれた。仕切りが得意な末吉君が皆の演奏出来る曲目を聞き回り、セットリストを作ってくれる。流石である。噂のジャンジャンの演奏には度肝を抜かれた。左手でMIDIによって伴奏やコード、ドラム・マシンを操作しながら、右に置いてあるピアノをその巨体を揺さぶりながら凄い迫力でプレイするのだ。曲はブギー調のものやラテンぽい物。末吉君もそれを更に盛り上げる迫力のドラミング。体が自然と動いてくる。僕はその後彼らに加わり、やはりブルースやジミヘン物を演奏、ここでもこれでもか!とばかりに弾きまくった。最後にお客さんから花束まで貰えたのには感激。音楽に国境無しを実感。外務省のMさんも譜面を必死に目で追いながらWingのオリジナル曲を含め、セッションの最初から最後まで必死に頑張ってくれた。次の日も仕事があるというのに、やっぱ好きなんだねー。
セッションが終わると「ちょっと庶民的な店に食べに行きませんか?」と末吉君。結局、日本、香港、中国のミュージシャン達10人でちょっと怪し気な食べ物屋さんに。羊の背骨に付いた僅かばかりの肉にしゃぶりついたり(これはGood !)、ザリガニ(あの真っ赤なザリガニを手で引き千切って身を食べる...)を食べたりとちょっと変わったものばかりを頼み、最後にトカゲや蛇が何匹も入った強いお酒まで飲んで、カーッと体が熱くなったところでお開きとなった。ん~普通の観光だったら絶対来れそうもないこの店も不思議な美味しさと雰囲気があった。中国の食文化は実に奥が深い。ホテルに着くと昨夜とは違い、とても暖かい部屋が僕を待っていた。その暖かさとライブの余韻とお酒のせいで、気持ち良くぐっすりと眠れた2日目の夜?(朝4時半)であった。
2002年11月15日