徒然日記 その173

上野駅のコンコースで、誰でも観れるフリー・コンサートがあり、そこでレイニーズ・バンドのゲストとしてプレイしてきた。音量の都合上ドラムセットは使わずパーカッションでやるとか、会場の雰囲気もだいたい判っていたので静か目な曲を3曲(Confession、Little Wing、Ave Maria)選んでみた。この日は女性コーラスやSaxプレイヤーもいるし、Confessionにはちょっとアレンジを施してみたんだ。違うサウンドのソロ楽器が入るとインスピレイションを刺激させられる。永ちゃんのツアーのリハでよくSaxのSnakeと二人でジャムっていたので、これは絶対ありだなと思っていたが、とても良い雰囲気が出せたと思う。管楽器をやる人なら判ると思うけど、この曲はなぜかギタリストにとっては普段あり得ないE♭という管の人のために作ったようなキーで録音していたんだよね。まさにこういう日が来ると判っていたように。Little Wingはリハではスローでやったんだけど、楽屋に帰ってからもう少しリズミックにしたいなと思い、これもいつもとはちょっとだけ違うものになった。ドラマーは居てくれたらよりダイナミクスが付くし、煽ってくれてとても良いんだけれど、たまにはこういう淡々と静かに進んでいくのも、よりギターのトーンに集中出来て良いものだなと思った。Ave Mariaは、この曲の持つメロディの素晴らしさに改めて感心させられる。何度弾いても常に自分の心に迫ってくるんだ。だから万人の心を打つのだろう。
今回のライヴで改めて思ったことがある。それは、何よりもお客さんの暖かさがミュージシャンにとって一番のエネルギーになるということ。自分にとって良かったライヴ、良くなかったと思うライヴ、自分勝手かもしれないけど、それはそこにかかってくるように思えてならない。すこし愚痴を言わせてもらえば、BOWとかに限らず、他の人のライヴを観に行った時、素晴らしい演奏をしているのに拍手はまばらだったり、しーんとしていることって少なくない。あれは何故?海外で何年も演奏したことのある僕の経験では、どんな無名バンドだろうが有名バンドだろうが良ければ大拍手、良くなければブーイングというのが当たり前だった。ところが日本では必ずしもその公式は当てはまらない。お目当てのバンドではないから、疲れているから、他の人が拍手しないから...とミュージシャン側からすると「俺たちってそんなに駄目なのかな...。」という気持にさせられることも多いと思う。それじゃあ持っている力を120%にまで高めるのは難しい。先日もイギリスの友人が出るのでBlue Note Tokyo に行ったら満員のお客さんと素晴らしいプレイにもかかわらず誰もその感情を表に出そうとはしなかった。何と言うか常に周りの人の様子を伺っているようだ。耐えかねずリーダーがその状態をMCで茶化すことによってメンバーを鼓舞していたが、見ていてとても可哀相な気持になった。生意気なようだけど、そのライヴを良くするのもミュージシャンを育てるのも皆の力に負うところは大きいと思うよ。ライヴというのはどちらかが一方的に与えたり与えられたりするものではないと思うから。常に自分はミュージシャンと1対1という気持でいれば、素直にその気持を表せるんじゃないだろうか。
上野でのライヴは客層も読めないし、どんなものになるのかも予想も付かなかったけれど、ただシンプルにお客さんの暖かさを感じ、それを自分の演奏のパワーに出来て幸せだなと感じられた20分間だった。


2004年2月28日